忘れる

 

【忘れる】

 

「忘れる」とは実に素敵なことだ。

人生とかいう漠然とした単位で測るならば、「忘れる」は、生命力のバロメータだ。この言葉を何か他の言葉に置換するならば、う~ん、そうだなぁ、「ま、いっか」なんかが適切かな。

しかし、これは決して容易なことではない。だって、「ま、いっか」は、(個人差はあるにせよ)大抵の場合は「辛さ」や「切なさ」を先ず味わわねばならないし、そいつを消化してはじめて辿り着ける境地なのだから。

だから、大袈裟に聞こえるかもしれないが、「忘れる」は生きていく力なのだ。この力を行使できずして、変化は望めない。ある時点に停滞し続け、おそらく閉鎖的にならざるを得ないであろう。

勘違いしてもらいたくないので注釈しておくと、オイラは、「忘れる」事ができることが優秀で、できない事が劣っているとは皆目思っていない。但し、「忘れられない」には、変化は望めないとは思っている。

消化した後も、記憶として、頭の中の自分年表に新たに記されるのだろうが、これは、「忘れられない」とは全く質が違う。「忘れる」は、記憶行きの列車に乗り、「忘れられない」は、駅のホームで、ずっと何かを待っているのだ。

しかし、上述した内容とは別に、そもそも「忘れる」という事案に関して、その原因が自分の「アホマヌケ」に起因することもしばしばあることを忘れてはならない。

オイラは、日々の暮らしの中で様々な「アホマヌケ」による「忘れる」と遭遇する。しばしば遭遇する。かく言うオイラも、しばしば「アホマヌケ」による「忘れる」を発生させる。

今回は、初回ブログということで(あまり関係ないが)、ベティ・ザ・トーイのメンバーにまつわる「アホマヌケ」による「忘れる」の発生事案を記してみたいと思う。

 

<第一事案:ゆうちゃんの自損>

あれは2012年か2013年の夏のとある日ことであった。

当時は、ベティ・ザ・トーイではないバンドであったが、ゆうちゃんとは当時から一緒にバンドをやっていた。

高円寺の某スタジオにてバンド練習を行っていたのだが、その日、ゆうちゃんは何やらご機嫌なご様子。

 

「靴を買っただよー」

 

(ほうほう。およ?ドクターマーチンかしら?)

 

「ドクターマーチン買っただよー」

 

どうやら練習の前に、ドクターマーチンの靴を購入したらしい。購入後、そのままスタジオに直行してきたという訳である。

そして、バンド練習を終え、ちょうど日も暮れ始めていたこともあり、「飲んでいきますか~」ってことで、オイラとゆうちゃん、それから当時のバンドのドラマーのK氏の3人で飲みに行くことになった。皆それぞれ機材を持ち、ゆうちゃんは、ドクターマーチンを自転車のカゴに入れ、スタジオからほど近い高円寺の高架下にある居酒屋へと向かった。

 

全員:「乾ぱ~い」(←自転車のカゴにマーチン忘れてる)

 

宴は始まった。

 

ゆうちゃん:「次のライブのセットリストどうすっかねぇ」(←自転車のカゴにマーチン忘れてる)

 

宴は続く。

 

ゆうちゃん:「サージェントペパーズもいいけど、最近はリボルバーの方がよく聴くあるよ~」(←自転車のカゴにマーチン忘れてる)

 

宴は続く。

 

ゆうちゃん:「ハイスタのAIR JAMのDVD買った?あれ、たまらんかったとよ~」(←自転車のカゴにマーチン忘れてる)

 

宴は続く。

 

ゆうちゃん:「マイスタのHAIR SHAMのティープイティー買った?まれ、はまらんたったとよ~」(←結構酔っ払てきた & 自転車のカゴにマーチン忘れてる)

 

宴は続く。

 

ゆうちゃん:「もろもろ帰りまふか~」(←自転車のカゴにマーチン忘れてる)

 

お会計。

 

ゆうちゃん:「あれ!?マーチンがねぇ!?」(←そりゃそうだ)

 

時すでに遅し。盗難。完全なる自損である。

もしかしたらゆうちゃんは、当時のこの事案を今でも「忘れられない」でいるかもしれない。駅のホームでドクターマーチンを待ち続けているかもしれない。

いや、もう流石に記憶行きの列車に乗ったかもね。

 

<第二事案:ヒデブーの自損>

つい最近の出来事。

オイラ宅にて、ヒデブーと酌を交わしていた時のことだ。

時間が経つのも忘れて、2人でレコードを聴きながらお酒を呑んでいたのだが、ふと時計に目をやると

 

二人:(およ?もうそろそろ終電の時間帯でねぇですか。)

 

オイラ:「泊まってくかい?」

 

ヒデブー:「いや今日は帰りますですー。」

 

ってな訳で、オイラは玄関までお見送り。

 

オイラ:「忘れ物はねぇですかー?ヒデブーは忘れ物けっこう多いからねぇ(笑)」

 

ヒデブー:「ば、ばか言っちゃいけねぇですよ!何も忘れちゃいねぇですよ!」

 

オイラ:「ほうでっか。そんじゃあまた~」

 

ガチャンと扉が閉まり、オイラはトイレでおしっこをしてから部屋へと戻った。

そして、録画しておいた「直虎」と「ワイドナショー」を観ようとソファーへ腰掛けた。

 

『カサッ!』

 

何かが腰にあたった。

 

オイラ:(ん?なんじゃこりゃ?......こ、こりゃキーケースではございませぬか!!)

 

オイラは、直ぐに携帯を手に取りヒデブーに電話をした。が、出ない。

 

オイラ:(おーい、ヒデブー!あんた、お家入れんですぞー!はよー気がつきんしゃーい!)

 

数分後、ようやくヒデブーから電話がかかってきた。

 

ヒデブー:「いや~、ギリギリ終電間に合いまいしたよ!電車乗ってたんで電話出れなかったっすー。どうしました?」

 

笑いをこらえるのが大変であったのは言うまでもない。まさに「アホマヌケ」であった。

オイラは冷静を装い発声した。

 

オイラ:「ヒ、ヒデブー......、キーケース......」

 

ヒデブー:「おわっ!?」

 

結局タクシーでオイラ宅にカムバックしたものの、もう電車など走っているはずもなく、ヒデブーはオイラ宅にお泊まりするはめに。

ま、無くした訳ではないので自損ではないが、やはりこれも「アホマヌケ」なエピソードとは言えよう。

 

 

 

という訳で、今回はゆうちゃんとヒデブーをネタに書かせて頂いた訳だが、明日は我が身、こんな事案はいつでも起こりうるのだ。

ただ、おそらくゆうちゃんの事案もヒデブーの事案も、もはや記憶行きの列車には乗れていると思う。彼らは今でも元気だ。素敵だ。ユニークだ。

やはり、「忘れる」とは実に素敵なことなのである。

 

 

おわり。

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